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初めての試みとなる第一回目のコンテストでは、総数20作品のご応募をいただきました。

筆者の皆様におかれましては、素敵な作品を投稿いただけましたこと、本当にありがとうございました。

選出に際して、審査員は各自3作品ずつ講評とともに投票を行ないました。

こちらのページでは第一回コンテストの受賞作品をはじめ、票を獲得した11作品についてのシナリオ講評と、

応募作品全体を通した総括、審査員紹介をご確認いただけます。

作品への​講評

あだに散るらむ花かるた / 因幡 脩 

シラーノ

シナリオにドラマ性を持たせる為の工夫が多くされており、読み応えがありました。時代性を感じさせる描写や、活きた登場人物が物語に説得力を持たせています。作中の小道具の使い方も洒落てますね。人によっては苦手な描写がありますが、奇をてらった結果入った物ではないので個人的には好きです。

あやさん。

昭和初期の日本を舞台に、探索者は花かるたにまつわる怪事件に、巻き込まれていきます。
昭和初期の雰囲気や情勢を感じさせる要素が、多数盛り込まれているところが魅力的です。
意味深な事件が立て続けに起こるなか、癖のあるNPCと接触し、真相に迫っていく流れには心が踊ります。

幸先

背景と人間関係が丁寧に織られた情感あふれる作品でした。花かるたが雰囲気づくり・イベントトリガー・情報源、と複数の役割を無理なく果たしている点が秀逸です。
人を辿りながら情報を入手していく形式は、シナリオの特徴である昭和初期の空気感を味わうのに適している一方で、同じ手段での探索が続いてしまう側面も感じました。

鬼姫キキ

花札というモチーフに大正時代の描写が相まって、古き良き日本のレトロさを強く感じます。シナリオの各所には、その事柄に関する当時の考え方、捉え方にも触れられており、一層理解を深めて楽しめそうです。NPCやモチーフ等、総じて空気感がとても良いですね。

akimochi

探索者の敵となるNPCの復讐の動機がわかりやすく、遊びやすいシナリオだと思います。事件を追う中でじわじわと恐怖心が煽られる感覚が非常によいと感じました。
『クトゥルフと帝国』がなくても遊べるシナリオですが、コラムのような形で雰囲気や用語について記述があると、より没入感が増すと思います。

Du@

大正という時代背景を楽しみつつ街の中を調査するシナリオ。サンドボックスタイプにありがちな動線のわかりにくさなどが少なく初心者でも回しやすいように感じた。またNPCたちのキャラクター性も豊かで、関わる上での楽しさがあるように思える。今回同人らしさを感じつつ、自身が好きなタイプのシナリオということでこの作品を個人賞に選ばせていただきました。

蛇の島 / ヤング

あやさん。

謎めいた島が舞台のシナリオです。怪しげで意味ありげなNPC、徐々に判明する島の真相、恐ろしく意味深な数々のイベント、探索者の取れるアプローチの多彩さなど、新クトゥルフ神話TRPGの魅力を最大限に活かしています。
挿絵やマップから、こだわりと熱意を感じます!

柏輝

現代の離島という設定が単なる舞台装置ではなく、背景として適切な意味を持っている。描写や処理が丁寧に書き込まれている為、十分な探索が用意されているにも関わらずキーパリングは比較的容易だろう。
シナリオの構造として、探索箇所が多く、動線やメリハリが弱い部分も見られるが、印象的なイベントや豊富な資料によって、プレイフィールは良好なものになると考えられる。
予備知識を必要とせず、キーパーに優しく、プレイヤーも一定以上の満足感を得ることのできるであろう、遊びやすく優秀なシナリオである。

鬼姫キキ

情報の開示が無理なく段階的で、遊びやすい作りになっていると思います。島という閉鎖環境ではありながらも、プレイヤーに自由度があり、かつシナリオの展開は明確なので迷うことは少ないでしょう。キーパーの負担もさほど重く感じないため、浮いたリソースを不気味な演出に回すことが出来ればより面白いセッションになるのではないでしょうか。

Du@

探索者たちは島の中で発生する様々なイベントを味わいつつ、自分たちの身に何が起こるのかを調べていくことになる。プレイヤーたちは何をするべきかがわかりやすく、対抗手段を考える楽しみがあり、キーパーとしても背景情報との齟齬もほとんどないためストレスなく遊べると思う。今回投稿されたシナリオの中でも一番完成度高いように思われますので、投票させていただきました。

悪魔の友達 / menntai

Du@

探索者たちは行方不明の友人を探す中で様々な陰謀に出会うことになる。1960年代ならではの雰囲気と時代背景を感じさせるストーリー展開が素晴らしいシナリオ。結末にたどり着くために、どのような手段を取るのか、NPCたちとどのような関係性を築くのかを楽しめるのではないだろうか。今回時代背景を一番うまく利用できていたシナリオだったと思いましたので、投票させていただきました。

鬼姫キキ

テーマが一貫していて非常に好みです。特にシナリオのほんの一部で得られる情報が、このテーマと絡めた作者のやりたかったこと、その片鱗を感じられて、そこに強く移入してしまいました。シナリオの雰囲気が星辰正しき刻のそれを感じたのは、私が同じネタを用いたとあるシナリオが好きだからでしょうか? 悪魔とは、友達とは、何を指すのでしょうね……。

柏輝

シナリオの纏まりが非常によく、丁寧に作成された良作であることが伝わってくる。
当時のアメリカの社会的背景を適切に組み込んだ神話的真相が設定されており、この時代を舞台に選ぶ妥当性が高い。また、NPCの描写や各所のキーパー情報は過不足なく的確で、キーパリングの際に非常に役に立つだろう。
解決方法はやや単純であり、ストーリーも特別に優れたものではないが、雰囲気の伝わる描写やビリーバビリティの高いNPCの行動原理、丁寧に記述された判定・処理など、シナリオとして重要な要素のクオリティがいずれも高い。頭一つ抜けた印象の良作である。

還壽 / ハゲトパス

幸先

神話事象と因習村を巧みに掛け合わせた背景のもと、ひとつひとつのシーンの悍ましさが光るシナリオでした。作中に一貫するじっとりした雰囲気が抜群です。
資料情報に偏りがちな点が少し気になるので、儀式や言いつけまわりの情報を整理すれば更に洗練されるのではと感じました。

イースト・チャーチ・ストリート 540 / ポリミ

シラーノ

場面場面が映像的に書かれている点、シナリオの背景や方向性、全体的な導線がしっかりしていた点が良かったです。舞台を活かして盛り上げる事や、探索者をどう当事者に上げるかについて考えられている事も高評価。ただ上手く纏まっているだけに、細部の導線と調整部分に目が行ってしまいました。

死の呼び声 / 無敵艦隊ガガドドン

シラーノ

今回の応募シナリオの中で、一番張り手型を意識された作品でした。大きめの起からアトラクションの様に話を進めていき、中弛みはさせないぞという計らいが良かったです。こういったコンセプトのシナリオに必要な物や展開、また所謂お約束も押さえてあり、これよこれ!という気持ちになれました。

是即ち数理の真髄也 / 愛餡

あやさん。

とある「知識を与える数式」にまつわる事件の真相に迫ります。クトゥルフ神話らしい恐怖と新クトゥルフ神話TRPGならではのゲーム性を味わえる、秀逸なシナリオです。
ひとつの神話的事象が、一滴の毒が侵食するかのように広がり、大きく世界を揺るがし混沌をもたらします。刻一刻と状況が悪化するなかで、探索者が事件を解決する手段を模索する、緊迫感がたまらないです!

擬態する死 / ビスケット・ココア

幸先

背景や探索者の動線が非常に整理されており、安定感のあるシナリオでした。その上で一癖ある神話生物や人物を展開し、コミカルさを加えて飽きさせないところに作者の優れたバランス感覚を感じます。
あえて提案するならば、題材としたサービスの日常性を活かし、探索者に直接驚異が忍び寄る余地があってもおもしろいのではないでしょうか。

バニー・ヴァンペル / ばるかろ

柏輝

創作上の人物・事件をシナリオ上の実在の存在として採用する試みは、本作品が依拠する受容史的な視点と合致しており、"クトゥルフ神話体系"の持つ包摂性にも親和的である。
文章にはやや生硬さがあるものの、シナリオの動線は明確かつシンプルで、雰囲気を阻害せず、初心者のプレイヤーにも優しい。
情報の配置には洗練の余地があり、エンディングに向かう流れは、熟練のプレイヤーにとって少々物足りなく感じるかも知れないが、吸血鬼に関する既存の創作の雰囲気を上手に取り込んでおり、筆者の解釈がよく伝わる良作である。

亡霊狼の殺人 / カフス

akimochi

神話事象を独自の切り口で表現しており、新鮮に感じました。また、発端となった出来事の背景が練られており、面白さを演出する一助になっているように思います。
1920年末期の日本といえば昭和初期であるため、大正から昭和に移り変わる特有の雰囲気が感じられる描写や記述、解説があるとより楽しめるものに仕上がるように思います。

翔べない蝶の願い / 三武 武夫

akimochi

クラウドファンデイングや動画配信者など、現代特有のものがシナリオに組み込まれており、「現代ならでは」な要素が含まれているシナリオだと思います。神話生物の能力がユニークであり、面白みを演出してくれると感じました。
カタカナ表記の文字が多いため、もう少し説明書きがあると親切であるように感じます。

全体講評

シラーノ

応募作品全般に独自色があり、それぞれとても魅力的でした。細かな描写や話の掘り下げに力が入っており、「自分が好きだと思う物を一つの作品にする」、という意気込みが感じられて良かったです。今回の審査にあたっては、構成に比重を置いた評価をしました。

あやさん。

同人シナリオコンテストに応募して頂き、ありがとうございます。
選んだ時代・舞台の持ち味を活かした作品が多く、シナリオを読んでいてワクワクしました。ボーナス・ダイスなど、新クトゥルフ神話TRPGの分かりやすいルールを用いた作品が多く、好印象です。
チェイス・ルールを用いた作品が少なかったので、次回のコンテストがあるなら、面白いギミックのチェイス・ルールを用いたシナリオにチャレンジする人をお待ちしております。

幸先

どの作品も魅力的で、選考にはとても悩みました。洗練された非線形シナリオから情報量の多い緻密なシナリオまで、テーマ性が高く作者の個性が光る作品が多かった印象です。また、余裕のある文字数制限だったこともあり、それぞれのテーマや舞台を活かす細やかな演出が、シナリオ展開の随所に感じられました。

柏輝

全体として、背景がよく練られており、クトゥルフ神話と現実世界の重ね合わせが丁寧に考えられている作品が多かったように感じられました。
単なるホラーアドベンチャーではなく、ラヴクラフトの描こうとした「秩序だった現実の影に潜む理解し難い真実」を描こうと試みる挑戦的な作品群が幾つも書き上げられたことを、査読を担当した審査者としても、クトゥルフ神話TRPGの一プレイヤーとしても、大変喜ばしく思っております。
筆者の皆様には、心よりの敬意を表したいと思います。お疲れ様でした。

鬼姫キキ

実際の所、シナリオ毎にどこまで個性と差異が出るのかと、未知数な部分が多いまま作品を読み始めました。ですが蓋を開けてみれば、どの作品も作者が注力したであろう箇所が光っており、ベクトルの違う個性豊かな作品揃いだったなと感じます。改めてシナリオごとに大きくトーンが異なるゲームだなという点を再認識できました。
全体講評書いてる現時点では他の審査員がどのシナリオを選んだのか知らないので、皆はどのシナリオのどの部分が刺さったのだろうと楽しみにしています。

akimochi

全体を通して、独自の解釈を多分に含むユニークなシナリオが多く、着眼点や発想が優れた作品が多かったと思います。ヴィクトリア朝時代や大正時代、昭和、現代にいたるまで、様々な舞台のシナリオがあり、読みごたえがありました。
 個人の評価方法として、背景情報や結末までの流れを見る1次審査。その後、独創性、表現力、物語性、構成力、システム性という5つの観点で評価をつけました。同点となり、甲乙つけがたいシナリオもありましたが、3作品に絞って投票を行いました。
 シナリオを読み進める中で、「ルールブック」に記載のないゲーム用語や専門用語が使用される例がありました。書き手と読み手で共有しているのはルールブックのみです。記載のない用語や一般的でない用語を使用する場合、コラム等で「定義」し、「説明」しましょう。そうでなければ、「伝わらない」という意識で執筆されると、より「読みやすく」、そして、より「伝わりやすく」なるかと思います。

Du@

今回のシナリオコンテストには公式風のものから所謂同人らしいものまで、様々なスタンスの作品が多く見られて「すごく同人コンテストらしいな〜」と思いながら作品を読ませて頂きました。全ての作品に突出する部分があり、その部分が好みか好みでないかで講評がかなり割れていると思います。このコンテストを機会に突出した部分を更に成長させたり、他の部分を成長させたりして更に素晴らしい作品が生み出されることを祈っています。

第一回は、以下の審査員が応募作を全て読み、特に評価したいシナリオに各々3票投票しました

​審査員紹介
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柏輝

『書物の神殿』など、神話と現実が丁寧に織り混ぜられた作品が好きです

代表作『女王陛下のサーヴァント』

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鬼姫キキ

好きなシナリオは『This Fire Shall Kill』です

代表作『終末幸福論』黙示録とその顛末 寄稿作品

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DU@

好きなシナリオは『灰に色あせて』です

​代表作『ハロー、アイム』

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akimochi

好きなシナリオは『トートの短剣』や

『殺人リスト』です

代表作『血塗られた指輪』

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あやさん。

執筆者の内に秘める”世界観”を知りたいです

​代表作『いろどられた夏やすみ』

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シラーノ

好きなシナリオは『ツチクワの嫁』

『ヴァンパイア・レポート』

生理的嫌悪感を覚える話が好きです

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幸先

はっとする展開のあるシナリオが好きです

代表作『ガラスの洞』

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