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第二回目のコンテストでは、総数25作品のご応募をいただきました。

筆者の皆様におかれましては、素敵な作品を投稿いただけましたこと、本当にありがとうございました。

選出に際して一次審査にて15作品にしぼり、その中から大賞を選出いたしました。

また、参加作品全ての中から、審査員賞を選出いたしました。

このページでは、大賞および個人賞の結果及び講評をご確認いただけます。

得票の内訳等はこちらからご確認ください。

第二回同人シナコン 大賞

土星へ! / 若森仁

柏輝

既存作品を下敷きとした良質なオマージュ作品。
原典に関するタームや背景的情報が多く、「クトゥルフ神話TRPG」ではなく「クトゥルフ神話体系」自体を好むか否かによって評価が分かれるだろうが、原作を踏まえたSF、という難しい題材を、負担なくプレイできる内容に落とし込んでいる点が高く評価できる。

鬼姫キキ

原作のあるSFシナリオではありますが、それら2点のハードルを感じさせない情報の簡潔さと、一貫した軽いテンポ感が好印象でした。後味もすっきりしていて好きです。サクッと遊びやすいシナリオなのではないかと思います。

DU@

スミスの『魔導士エイボン』をベースにした舞台をさ迷いながら進んでいく展開はクトゥルフ神話らしさを感じました。1つ1つのシーンの描写もわかりやすく、最終的に探索者がとりえる手段も多種多様であり、とても高いクオリティーの作品でした。

akimochi

『土星への扉』をシナリオに落とし込み、クトゥルフ神話TRPGとして成立させている技巧が素晴らしいと思います。数年前に小説を読んだ時に抱いたワクワク感が蘇りました。シナリオに求めるものがすべて詰まっており、『土星への扉』を下地にしたこれ以上ないシナリオだと思います!

​あやさん。

2132年の土星を舞台にした、ユニークな作品です。
シナリオの導線が明確なので、類を見ない舞台とユーモラスなイベントを心置きなく楽しめます。探索者が行う奇妙な旅、そこで出会う異質な神話的存在の雰囲気は、奇天烈で独特な空気感があり、それは「土星への門」へのリスペクトを感じます。

因幡脩

このシナリオの魅力は、C.A.スミスの短編『土星への扉』の世界観を独自の設定と融合させ、一つの作品へと昇華させたところにあります。やや理解されづらいトーンに敢えて挑まれた作品愛と、サイクラノーシュの「その後」をみずみずしく描ききった筆力に、心より賞賛の拍手を贈りたいと思います。

アノマロ

異星における探検・サバイバルは、SFとして王道です。王道というのは、ユーザーが「ここはおさえておいてほしい」というイベント・展開があるものであり、この作品はそのほとんどを確保しつつ、唯一性も兼ね備えています。構造もシンプルながら退屈しなさそうで、同人の手本のようなシナリオです。

審査員賞

​柏輝賞: ハゲトパス作『太陽を追う者』

既存の中国神話をクトゥルフ神話体系の文脈で再解釈した正統派の秀作。
旧支配者の遺した未踏遺跡の調査、という王道に則りつつ、登場するNPCや調査で得られる情報、襲い来る脅威などには時代感と雰囲気があり、物語として良質。
文章の精度やNPC情報などを更に整えれば、頭一つ抜けたクオリティになるだろう。

​鬼姫キキ賞: めりーさん作『珍宝テクノブレイク』

「おいなんだこれ!!!」と叫びながら遊んでいるのが脳裏に浮かびます。ギアの壊れた男子高校生が勢いで書き上げたようなシナリオ(褒めています)ですが、蓋を開けてみれば作者の「やるなら真面目にやったるわ」みたいな姿勢が伺えます。おふざけに大真面目なの、私は好きでした。

DU@賞: ちず作『感性、完成、そして歓声。』

1920アメリカ、アーカムを主な舞台としたシナリオです。
依頼から始まる導入、様子のおかしい調査対象者と定番と思えるような流れではありますが、描写の丁寧さに心惹かれるものがありました。欲を言うのであれば、追加の情報は()で記すのではなく1つの文章としてまとめているとさらに良い作品になるかもしれません。

akimochi賞: 若菜弥三郎作『吹風枯胡沙溜息』

歌舞伎劇団をテーマに組み込んだシナリオであり、雰囲気の作り方が魅力的で与えられた情報から求めるものが提供される素晴らしいシナリオだと感じました。一方で、事件の核心に踏み込むには、あと一押しが足りないようにも思えますので、もう一工夫によってさらに輝く可能性を秘めていると思います。

あやさん。賞: croma作『Click Click』

明確なテーマ性で、短くまとまりのある作品です。年少探索者らしいひと夏の心躍る冒険と、現代日本の影に潜む神話的事象の恐怖を楽しめます。
分かりやすく魅力的な背景情報、新クトゥルフ神話TRPG・年少探索者らしいクライマックスのイベントなど、みんなが楽しめる要素を詰め込んでいて、作者の愛を感じました。

因幡脩賞: やよ作『望まれぬ夜明け』

神話生物の特性を中心にした、NPCおよび背景の設定が上手いです。考えて行動するシティ探索の楽しさ、昭和初期の風情も感じられ、その探索者たちだけの物語を紡げるだけの拡張性も秘めています。もう少し文章量がほしい、読みたいと感じてしまったのは、自分がこの作品に魅せられたがゆえでしょう。

アノマロ賞: やよ作『望まれぬ夜明け』

魅力的な舞台、魅力的な導入、徐々に真相に迫る奥深い探索、そしてエモーショナルなクライマックスの演出、どれをとっても私の好みであり、この作品が2次審査に進んでいれば間違いなく大賞として票を投じていました。どのように作品の魅力を伝えたいかが非常に明確で、素晴らしいです。

全体講評

柏輝

参加者の皆様、執筆お疲れ様でした。
第2回ということもあり、前回にも増して個性豊かな作品が多く、いずれも筆者の独自性や工夫が伝わってくるものでした。
舞台、形式、トーンなども非常に多様性に富んでおり、今や広範な人々がプレイする「クトゥルフ神話TRPG」の裾野の広さを改めて実感しました。
本コンテストを機に、より多くのシナリオが生まれ、より多様なプレイグループに届き、より深みのある同人文化が育まれることを願ってやみません。

​鬼姫キキ

第一回に引き続き、今回も審査を担当させていただきました。今回は特に「シナリオがやりたいこと、させたいことが明確かつ、それが伝わるか」という点に重きを置いて審査に臨みましたが、最後の最後まで票を絞るのが本当に難しく、全体的に力作揃いだったと思います。また、同人ならではといったタイトルも複数あり、とても楽しい審査でした。自分で遊びたかった気持ちがとても強いです。

​DU@

この度はたくさんの作品の応募ありがとうございました。

作品を読ませていただく中で感じたことは、どのシナリオにも明確なコンセプトがあるということです。
小説をモチーフとしていたり、日本以外の場所を舞台としていたりと様々な作品の「色」があったと感じています。そして、その「色」をどのように読み手側に理解させるのかが、今回のシナリオコンテストの中で重要なポイントだったように思えます。

これからも作者の方の「色」を際立たせた作品が公表されることを心待ちにしています。

akimochi

ご応募くださった皆様、ありがとうございました。
前回に引き続き、バリエーションに富んでおり、力作が多かったと思います。
読むより遊びたかったな、という作品が何作品かあり、審査員になったことを若干後悔もしました。それでも、作者の工夫が凝らされた味わい深いシナリオ、原作を意識したシナリオ、インパクトが強く、印象に残るシナリオなど、読んでいてとても楽しく、携われたことを嬉しく感じています。

あやさん。

没入感の高い背景、インパクトのある描写、心躍る展開など、作者のこだわりを感じる力作が揃っていました。

悩んだ結果、作者が楽しんで創作していることが伝わってきた作品に、私は投票いたしました。これだけ魅力的な背景・展開なら、クライマックスがもっと派手で、探索者の介入できる要素が多ければ良かったのにと惜しい気持ちにさせる作品もありました。
第2回同人シナコンに関わったみなさま、ありがとうございました。

因幡脩

色とりどりの作品を読みふけったこの2か月は、宝石店に迷い込んだかのような素敵な時間でした。受賞の有無はどうあれ、それぞれの作品の輝きが色褪せるわけではありません。本当にありがとうございました。
さて、宝石には原石のカットと装飾がつきものです。今回、非常にクオリティが高く、丁寧な造りの作品が多かったのですが、きれいにカットしただけでは人の目を引きつけることは難しいです。深まる謎、予想を裏切る展開など、次はプレイヤーの反応を揺さぶる点を意識してみてはいかがでしょうか。

アノマロ

上位のシナリオはどれもレベルが高かったです。
票が入った作品とそうでない作品を分けたのは、シナリオの魅力(ココを楽しんでほしいという要素)を“概要”や“キーパーの知識”、“導入”などの序盤の文章で伝えられたか、だと感じています。逆にここで魅力を伝えきれないということは、シナリオのコンセプトがぼやけているということです。
コンセプトがしっかりと固まっていれば、シナリオ本文の演出・構成もそれを伝えるためにより適した形に再構築されるはずです。

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